センター長挨拶
安曇野赤十字病院脊椎脊髄病センターは、2025年7月、地域の脊椎脊髄病患者さんに時代のニーズに合わせた医療を提供し、生活レベルの維持向上・健康寿命延伸を目指して設立されました。
脊椎脊髄病は運動器疾患であるため、生活の質の低下・日常生活への支障と直結します。その結果、社会の高齢化・核家族化から高齢者の自立した生活が余儀なくされた現在、看護・介護に大きな問題が起こっております。このことより、患者さん個々のライススタイルに合わせたオーダーメイドの治療が必要と考えております。
当センターでは、専門的な知識を持った様々な医療スタッフが一丸となって、患者さんの治療目標に向かってサポートします。
脊椎脊髄病センター長 泉水 邦洋
理念
地域の脊椎脊髄病患者さんに時代のニーズに合わせた医療を提供し、
生活レベルの維持向上・健康寿命延伸を目指す。
センター構成メンバー
整形外科医師(脊椎脊髄病学会認定指導医2名)
病棟看護師(看護部)
入退院支援看護師(看護部)
手術室看護師(看護部)
理学療法士・作業療法士(リハビリテーション科)
放射線技師(放射線科)
臨床検査技師(検査部)
薬剤師(薬剤部)
管理栄養士(医療技術部)
事務職員
このようなメンバー構成で、スムーズな受診、ストレスのない入院生活、患者さんの全身状態への負担軽減、自宅復帰・社会復帰の援助、栄養状態の管理、中止薬等の管理、術中レントゲン被ばく量の低減、術中神経モニタリングによる神経合併症回避等が十分機能するためのメンバー構成となっております。
脊椎脊髄病センター診療実績
| 変性疾患 | 頚椎変性疾患 | 頚椎人工椎間板置換術 前方除圧固定術 後方除圧術 |
| 胸椎変性疾患 | 後方除圧術 後方除圧固定術 | |
| 腰椎変性疾患 | 椎間板内酵素注入療法 ヘルニア摘出術 後方除圧術 除圧固定術 | |
| 変性疾患 | ||
| 腰椎変性疾患 | ||
| 外傷 | 経皮的椎体形成術 経皮的椎弓根スクリュー固定術 観血的整復固定術 | |
| 腫瘍 | 腫瘍摘出術 | |
治療内容紹介
特に力を入れている治療法について紹介します。
●経皮的椎体形成術
骨折椎体内でバルーンをふくらませて、椎体が潰れている状態や背中側に凸に変形している状態を戻してから骨セメント(+ステント)を注入し、骨折部を安定化させ疼痛を早期に改善させる手術です。
高齢者に対する低侵襲手術で、高齢者の臥床傾向による多くの合併症を軽減させることが期待されます。
手術翌日よりコルセットを装着し歩行開始
順調なら術後10日で退院可能
●BKP(Balloon Kyphoplasty)
低侵襲な経皮的手術
(5mm程度の切開2箇所)
手術時間:1椎体あたり20~30分
全身麻酔
出血はわずか
骨折を戻してできた空間にセメントのみを注入
適応は骨粗鬆症性椎体骨折・転移性骨腫瘍・多発性骨髄腫
●VBS(Vertebral Body Stenting System)
低侵襲な経皮的手術
(1cm弱の切開2箇所)
手術時間:1椎体あたり30分弱
全身麻酔
出血はわずか
骨折を戻してできた空間にステントとセメントを注入
適応は骨粗鬆症性椎体骨折
●頚椎人工椎間板置換術
前方からの神経圧迫要因であるヘルニアや骨棘等による神経圧迫に対する除圧後に、椎間の固定はせずに人工椎間板を挿入し可動域を保持する手術です。
適応は、椎間板ヘルニア・骨棘を主因とした頚部神経根症または脊髄症です。
使用する人工椎間板
使用する人工椎間板
各部署の取り組み
●病棟看護師・リハビリテーション科
コルセット装着の仕方、日常動作等を指導目的とする動画を作成し、患者さんや家族が自分のスマホで何度でも見ることができるようになりました。
●リハビリテーション科
当院のリハビリテーション科運動器班は、理学療法士5名・作業療法士2名の体制で患者様の診療にあたっています。クリニカルパス(診療計画表)を運用し、入院中のスケジュールの説明や退院までのイメージをつけていただき、入院による不安の解消に取り組んでいます。
術前の評価から始まり、術後は早期より離床訓練、歩行訓練や日常生活の動作訓練など、患者様に合わせた多様なリハビリを実施しています。医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などの多職種の連携をはかりながら、退院支援にも積極的に関わっています。必要に応じて継続的なリハビリを受けることを目的に、回復期リハビリテーション病棟を利用することもあります。
●放射線科
脊椎脊髄病の手術を専門に担当する技師が1名おり、手術中に使用する外科用イメージというレントゲン装置の取り扱い設定技術が優れ、手術の低侵襲化による医療従事者や患者さんの被ばく低減や手術時間短縮に寄与しております。
●手術室看護師
当院では脊椎脊髄病センター立ち上げに伴い、手術室でも専門性の高い脊椎手術に対応する体制を整えています。
脊椎手術では放射線技師との連携による透視下手技のサポート、検査技師による術中MEP(運動誘発電位)モニタリングの実施など、他職種によるチーム医療が不可欠です。
看護師は、BKP(経皮的椎体形成術)手術やセメント注入型スクリュー使用におけるセメント管理に加え、器械出し看護師としての専門性を発揮しています。脊椎手術では使用する器械が多く、操作も複雑です。器械出し看護師は、術式ごとの器械の特徴を理解し、術者の動きを先読みして器械を的確に準備して渡すことが求められます。スムーズな手術進行を支えることで、チームの連携を強化し、患者さんにとってより安全で質の高い手術環境を整えています。
今後は、器械出し看護師の更なる技術向上を目指し、勉強会や器械の取り扱い教育を実施予定です。脊椎手術に習熟したスタッフの育成を通じて、手術時間の短縮、術後合併症の低減、被ばく量の抑制など、患者さんと医療従事者双方にとってより安全で質の高い医療看護提供を目指しています。
●臨床検査技師
術中神経モニタリングで手術を支えております。
~術中神経モニタリング(運動誘発電位 MEP:motor evoked potential)~
脊椎の電気伝導能を評価する方法であり、手術中の脊髄のダメージをリアルタイムで知ることができます。このことで脊髄手術による運動機能障害を回避あるいは軽減することができ手術の安全性を向上させる為に実施しています。
具体的な方法としては経頭蓋的に運動野を電気刺激し四肢の筋肉の電位を記録することで運動経路の機能を評価します。
●管理栄養士
栄養状態が手術成績に関与するため、術前から必要に応じて介入しています。アレルギー等のトラブルが起こらないよう注意を払い、入院中は食事状態や栄養状態にも目をかけています。
●薬剤師
周術期に中止が必要な薬剤管理や感染対策の抗生剤使用等に関与しています。
●入退院支援看護師
入院時の不安解消のための説明や退院に向けた必要な支援等のお手伝いをし、ストレスのない入院生活・心配のない退院生活をおくれるようにしています。
脊椎疾患によって、これまでのような生活が難しくなる患者さんが退院後も安心してご自宅や施設で過ごせるよう、入退院支援看護師が病棟に常駐して日々サポートを行っています。患者さんやご家族と直接関わりながら、退院に向けた不安や疑問に寄り添い、多職種と連携して必要な支援体制の調整・情報提供を行っています。「これからの生活」を前向きに歩んでいけるよう、丁寧な支援を大切にしています。
●事務部
紹介患者さんのスムーズな受診、地域の開業医の先生方との連携を担っています。
まずは脊椎専門外来に受診をお願いします。
多職種で勉強会を行い、研鑽を深めています!
手術実績
| 2024年度 | 2025年度 | ||
| 頚椎 | 26 | 20 | |
| 前方手術 | 5 | 1 | |
| 後方手術 | 21 | 19 | |
| 胸椎 | 21 | 20 | |
| 除圧固定術 | 3 | 9 | |
| 除圧術 | 3 | 1 | |
| 経皮的椎体形成術(BKP・VBS) | 15 | 10 | |
| 腰椎 | 130 | 127 | |
| 除圧固定術 | 23 | 24 | |
| 除圧術 | 59 | 57 | |
| ヘルニア摘出術 | 22 | 16 | |
| 経皮的椎体形成術(BKP・VBS) | 24 | 27 | |
| 椎間板内酵素注入療法 | 2 | 3 | |
| その他 | 2 | 3 | |
| 総数 | 179 | 170 |
ご寄付のお願い
脊椎脊髄病センターでは、地域の皆様に安心・安全で質の高い医療を提供し続けるため、日々、診療体制の充実と医療環境の向上に努めております。
このたび、さらなる医療機器設備の安定的な運用と更新に向け、皆様からの温かいご支援を募ることといたしました。当センターの現状とご寄付に関する詳細につきましては、下記の案内をご覧いただけますと幸いです。