救急カリキュラム 安曇野赤十字病院救急
Ⅰ. 研修スケジュール概要
1)当院は、松本広域医療圏における二次救急指定医療機関であるが、同時に第一線の医療機関として、救急車搬送患者あるいは紹介患者のみならず、Walk in患者も多数受け入れている。現在は、平日の日勤帯と毎週日曜日~木曜日の夜間(ハッピーマンデーの3連休は最終日の月曜日)について、救急部専従医師が初期診療を担当しており、専科のオンコール体制をとっている。これ以外の夜間のみ各科当直体制を布いて、救急外来業務マニュアルにより運用されている。
2)救急業務研修の期間中は、月4回程度の当直勤務に指導医とともに従事する。当直翌日の午後は休養あるいは自主研修とする。
Ⅱ. 研修目標
1.一般目標
1)救急現場における救急医療を研修する。 迅速かつ的確な初期治療を行なうための実地研修を主とする。
2)症状の軽重を問わず、患者の訴えを重く受け止める習慣を身に付ける。
3)スタッフ間の連携プレーの重要性を学ぶ。
4)重症患者の救急治療に必要な基本的知識の習得に努める。
5)研修の最大の目標は、救急初療患者の呈する症状と身体所見、簡単な検査所見に基づいた鑑別診断、初期治療を的確に行なう能力を習得することにある。
2.行動目標
A.経験すべき診察法・検査・手技
(1)基本的救急診療能力
1)問診および病歴の記載
患者との間に良いコミュニケーションを保って問診を行い、総合的に病態を把握できるようになる。病歴の記載は、問題解決志向型病歴を作るように工夫する。
①主訴
②現病歴
③既往歴
④薬歴
⑤家族歴
2)救急初療診察法
救急診療に必要な基本的態度と技能を身に付ける。
① バイタルサイン
② 意識状態の把握
③ 内因性疾患の診察法
④ 外因性疾患の診察法
⑤ 必要に応じて全身をくまなく観察することの重要性を理解し、実践する
⑥ 患者の状態が刻々と変化する場合があることを理解し、経過を追って診察する習慣を身に付ける。
特に外傷患者においては、日本外傷学会のJATEC(Japan Advanced trauma Evaluation&Care)に沿った診療を身につける。
(2)基本的救急臨床検査
1)放射線検査
① X線単純撮影検査(指示を的確に出し、正しく読影できる)
② X線CT検査(指示を的確に出し、正しく読影できる)
③ MRI検査
④ 造影検査
2)生理学的検査(指示を的確に出し、結果を正しく判定できる)
3)検体検査(指示を的確に出し、結果を正しく判定できる)
4)感染症検査
(3)基本的治療法
1) 処方箋の発行
2) 注射の施行(皮内、皮下、筋肉、静脈)
3) 副作用の評価ならびに対応
4) 療養指導(安静度、体位、食事、入浴、排泄、環境整備)
5) 基本的手技
気道確保、人工呼吸、心肺蘇生法、ドレーン・チューブ類の管理、創部消毒手技、皮膚縫合(局所麻酔を含む)などを実施できる。
B.経験すべき症状・病態・疾患
(1)頻度の高い症状
1)意識障害
2)めまい
3)呼吸困難
4)胸痛・腹痛
5)痙攣発作
6)失神
(2)緊急を要する症状・病態
1)心肺停止
2)多発外傷
3)薬物中毒
(3)経験が求められる疾患・病態(基本的知識を含む)
1)脳・脊髄血管疾患
2)循環器疾患
3)呼吸器疾患
4)消化器疾患
C.Bの項目の経験優先順位
① 経験優先順位第一位(最優先)項目
心肺停止患者の初期治療、検査・鑑別診断、治療計画の立案
多発外傷患者の初期治療、検査・鑑別診断、治療計画の立案
・合計4例以上を経験し、うち1例についてレポートを提出する。
② 経験優先順位第二位項目
薬物中毒患者の初期治療、検査・鑑別診断、治療計画の立案
③ 経験優先順位第三位項目
脳血管疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患の初期治療、検査・鑑別診断、治療計画の立案
・それぞれについて1例ずつレポートを提出する。
Ⅲ.指導体制
救急の現場においては、指導医の指導による。