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精神科臨床研修プログラム(2年次、1.5ヶ月)ならびに地域医療研修プログラム(2年次、1ヶ月)

(城西病院等、城西医療財団研修プログラム)

 

1. 研修理念

将来の専門性にかかわらず,医学・医療の社会的ニーズを認識しつつ,日常診療で頻繁に遭遇する病気や病態に適切に対応できるよう,プライマリ・ケアの基本的な診療能力(態度,技能,知識)を身につけるとともに,医師としての人格を涵養する。

 

2.医療人としての基本的事項

(1)感性の練磨

患者や家族の苦痛を感じ取れる感性と,それを和らげる知識と技術を持つことは,医療に携わる者にとって重要な事項である。感性の訓練には,患者の訴えに耳を傾けて患者を理解することはもちろんであるが,患者をとりまく人間関係に働きかけて多くの情報を得るとともに,あらゆる角度からその情報を分析して,患者の問題点を明確にすることから始まる。
それを通して患者を深く理解し共感すると同時に,患者や周囲への対応策がみえてくる。これが全人的医療と考えることができる。

 

(2)コミュニケーション能力の獲得

医療人としてもっとも大事な資質のひとつはコミュニケーション能力である。医師単独で診療することは少なく,患者家族はじめ多くの職種の人々の協力のもとに診療が行われる。この場合に必要なのがコミュニケーション能力である。挨拶し,言葉を交わし話し合う。相手の気持ちを理解し尊重しつつ,自分の考えを述べることができる。相手を傷つけることなく謙虚な態度が必要である。

 

(3)筋の通った医療

根拠に基づいた医療を行う。性急な結果だけを求めるのでなく,何故どういう理由で行うか,プロセスを大切にした医療を行う。そのために報告・連絡・相談などをきちんと行い,あるがままの現実を受けとめ,失敗を恐れず,どうしたら事が成せるかを前向きに考えていく態度を習得する。結果として情報開示にも耐えられる医療を行う覚悟が必要である。日常医療行為の中やカンファレンスでなどで質問を繰り返し訓練する。

 

3.研修の目標

(1)一般目標(GIO : General Instructional Objectives)

全ての研修医が,研修終了後の各科日常診療の中でみられる精神症状を正しく診断し,適切に治療でき,必要な場合には適時精神科への診察依頼ができるように,主な精神疾患患者を指導医とともに担当し治療する。

 

具体的項目

#1プライマリ・ケアに求められる,精神症状の診断と治療技術を身につける。

① 精神症状の評価と記載ができる。

② 診断(操作的診断法を含む),状態像の把握と重症度の客観的評価法を修得する。

③ 精神症状への治療技術(薬物療法,精神療法,心理社会療法,心理的介入方法)の基本を身につける。

 

#2医療コミュニケーション技術を身につける。

① 初回面接のための技術を身につける。

② 患者・家族の心理理解のための面接技術を身につける。

③ インフォームド・コンセントに必要な技術を身につける。

④ メンタルヘルスケアの技術を身につける。

 

#3身体疾患を有する患者の精神症状の評価と治療技術を身につける。

① 対応困難患者の心理・行動理解のための知識と技術を身につける。

② 精神症状の評価と治療技術(薬物療法,精神療法,心理社会療法,心理的介入方法)の基本を身につける。

③ コンサルテーション・リエゾン精神医学の技術を身につける。

④ 緩和ケアの技術を身につける。

 

#4チーム医療に必要な技術を身につける。

① チーム医療モデルを理解する。

② 他職種(コメディカルスタッフ)との連携のための技術を身につける。

③ 他の医療機関との医療連携をはかるための技術を身につける。

 

#5精神科リハビリテーションや地域支援体制を経験する。

① 精神科デイケア(ナイトケア・デイナイトケアを含む)を経験する。

② 訪問看護・訪問診療を経験する。

③ 社会復帰施設・居宅生活支援事業を経験し,社会資源を活用する技術を身につける。

④ 地域リハビリテーション(共同作業所,小規模授産施設)を経験し,医療と福祉サービスを一体的に提供する技術を身につける。

⑤ 保健所の精神保健活動を経験する。

 

(2)行動目標(SBO : Specific Behavioral Objectives)

1)症例を担当し,診断(操作的診断法を含む),状態像の把握と重症度の客観的評価法を修得する。

2)向精神薬(抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬等)を適切に選択できるように臨床精神薬理学的な基礎知識を学び,臨床場面で自ら実践できるようにする。同時に適切な精神療法,心理社会療法(生活療法)を身につけて実践する。

3)家族からの病歴聴取,病名告知,疾患・治療法の患者家族への説明を実践する。

4)病期に応じて薬物療法と心理社会療法をバランスよく組み合わせ,ノーマライゼーションを目指した包括的治療計画を立案する。

5)コメディカルスタッフや患者家族と協調し,インフォームド・コンセントに基づいて包括的治療計画を実践する。

6)訪問看護や外来デイケアなどに参加し地域医療体制を経験するとともに,社会復帰施設を見学して福祉との連携を理解する。

7)身体合併症を持つ精神疾患症例や精神症状を呈する身体疾患症例を体験し,基礎的なコンサルテーション・リエゾン精神医学を修得する。

8)心身医学的診療を修得する。

9)緩和ケア・終末期医療,遺伝子診断・治療,移植医療等を必要とする患者とその家族に対して配慮ができる。

 

4.研修施設と指導責任者

研修施設 : 城西病院

指導責任者 : 関 健

研修施設 : 神城醫院

指導責任者 : 宮城 彰

指導体制 : 研修医1名あたりの受け持ち患者を10名程度とし,研修医3名以内に指導医1名が責任をもって監督,指導を行う。

 

5.研修内容(別紙1参照)

城西病院並びにミサトピア小倉病院、及び関連施設で行う。

(1)経験する疾患・病態:

A.(自ら受け持ちレポートを作成する)統合失調症(精神分裂病),気分障害(うつ病,躁うつ病),認知症(脳血管性認知症を含む)

B.(自ら受け持つ又は外来で経験する)身体表現性障害・ストレス関連障害

C.(自ら受け持つ又は外来で経験することが望ましい)症状精神病(せん妄),アルコール依存症,不安障害(パニック症候群),身体合併症を持つ精神疾患

D.(余裕があれば外来又は入院患者で経験する)てんかん,児童思春期精神障害,薬物依存症,精神科救急疾患

 

(2)クルズス:

週2回程度,午前または午後1.5時間のクルズスを受ける。

① 精神医療概論: 外来,入院治療を経て社会復帰に至る精神科医療の特徴を修得する。

② 心理面接法: 初回面接,支持的精神療法等,精神療法の基礎を修得する。

③ 臨床精神薬理: 向精神薬(抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬等)の作用・副作用・使用法について修得する。

④ 心理検査: 種類,意義,判読について修得する。

⑤ 脳波検査: 脳波記録法,判読について修得する。

⑥ 精神保健福祉法他: 精神保健福祉法を中心に法と精神医療について修得する。

⑦ 精神障害者福祉と社会復帰活動: 社会復帰施設の種類,地域支援の方法について概要を修得する。

<以下の疾患・病態について病状,治療法の概要を修得する>

⑧ 統合失調症

⑨ 気分障害

⑩ 不安障害(パニック症候群)等神経症圏の疾患

⑪ 睡眠障害

⑫ 認知症を含む器質性精神障害

⑬ ストレス関連障害

⑭ 児童思春期精神障害

⑮ 人格障害

⑯ 精神作用物質・アルコール依存症

 

(3)経験する検査:

心理検査1;人格検査(ロールシャッハテスト,MMPI,TAT,バウムテスト等)

心理検査2;知能検査(WAIS-R,田中ビネー,コース立方体等)

その他(長谷川式,MAS等)

脳波検査(睡眠ポリグラフ)

頭部画像診断(CT,MRI)

 

(4)経験する診察法

医療面接;初回面接技法,病歴聴取

精神症状の把握と記載

病名告知

インフォームド・コンセント

 

(5)経験する治療法

薬物療法;副作用(錐体外路症状,悪性症候群を含む)についても経験する

精神療法;支持的精神療法,心理社会療法(生活療法),集団療法等

行動療法

作業療法

SST

電撃療法

その他;自律訓練法,バイオフィードバック等

 

(6)研修概要

a.午 前

① オリエンテーション(1日目午前中のみ)

② 外来患者の診療

・ 新患患者の予診をとり,陪席する。

・ 複数の医師の外来を陪診し,多くの症例を経験する。

・ 入院に至った症例は,受け持つ。

・ 2週目以降,再来患者では治療の評価を行う。

・ 精神科専門外来(児童・青年期,てんかん,老年期等)を陪診する。

・ 1ヶ月程度の経験の後は,再来患者の数症例を受け持ち診療する。

・ 身体表現性障害,ストレス関連障害(B疾患)は必ず経験する。

・ アルコール依存症,不安障害(パニック症候群)を経験する。

・ 二次救急輪番制当番日に指導医の元で副当直をし,精神科救急疾患の診療を経験する。

 

* 研修の一般目標

#1.プライマリ・ケアに求められる,精神症状の診断と治療技術を身つける。

#2.医療コミュニケーション技術を身につける。

 

b.午 後

① 入院患者の診療

・ 指導医のもとで,症例(10例程度)を担当し,診断(操作的診断法を含む),状態像の把握と重症度の客観的評価法を修得する。

・ 心理教育(病名告知,疾患・治療法の患者家族への説明)を実践するとともにインフォームド・コンセントを体得する。

・ 精神科薬物療法及び身体療法(電気けいれん療法等)並びに心理社会療法の基礎を修得する。

・ 認知症(血管性認知症を含む),気分障害(うつ病,躁うつ病),統合失調症(精神分裂病)(A疾患)は,レポートを提出する。

・ 症状精神病を経験する。

・ 身体合併症を持つ精神疾患患者,精神症状を合併した身体疾患患者を指導医並びに一般科医師とともに診療し,コンサルテーション・リエゾン精神医学を修得する。

・ 週1回程度指導医とともに病棟の当直(副当直)を体験する。

 

* 研修の一般目標

#3.身体疾患を有する患者の精神症状の評価と治療技術を身につける。

② チーム医療への参加

・ コメディカルスタッフ(薬剤師,看護師,作業療法士,精神保健福祉士,臨床心理技術者,管理栄養士等)と協力し治療(チーム医療)に当たる。

・ 作業療法・SST等リハビリテーション活動を体験する。

・ 病棟レクレーション活動及び行事に参加する。

・ ケースカンファレンス,スタッフミーティングに参加し,チーム医療の基礎を修得する。

 

* 研修の一般目標

#4.チーム医療に必要な技術を身につける。

③ 社会復帰活動・地域リハビリテーション・地域ケアへの参加

・ デイケア(ナイトケア,デイナイトケアを含む)に,週1回程度参加する。

・ 共同作業所,授産施設等での地域リハビリテーション活動を見学する。

・ 社会復帰施設を見学し,医療連携等を体験し,スタッフのカンファランスに出席し,社会資源の活用について修得する。

・ 指導医の訪問診療に同行する。

・ 訪問看護師・精神保健福祉士と同行訪問し,地域支援体制を経験する。

・ 訪問介護に同行する。

・ 知的障害者福祉施設への訪問診療(嘱託活動)を体験する。

・ 産業医活動(嘱託活動)を通して職場のメンタルヘルス活動を体験する。

・ アルコール依存症集団精神療法に参加する。又,断酒会・AA等に出席し,地域ケアを体験する。

 

* 研修の一般目標

#5.精神科リハビリテーションや地域支援体制を経験する。

④ まとめの作業

・ 中間期(1ヶ月後,2ヶ月後)に指導医の指導を受ける。

・ 最終週の午後は,レポートの作成,指導医との質疑,評価などに当てる。

 

⑤ その他

・ クルズス,その他院内の研修会及び院外の研究会に参加する。又,管理型病院で開催されるCPCには極力参加する(自らの症例の発表が望ましい)。

・ 保健所,精神保健センターにおける地域精神保健活動(デイケア等)に参加する。

 

6.経験目標

A 経験すべき診察法・検査・手技

以下の項目については精神科研修以前に修得していることを前提としている。精神科において患者を受け持つ場合でも必要な項目であり,改めて記載する。

 

(1)基本的な身体診察法

病態の正確な把握ができるよう,全身にわたる身体診察を系統的に実施し,記載するために,

① 全身の観察(バイタルサインと精神状態の把握,皮膚や表在のリンパ節の診察を含む)ができ,記載できる。

② 頭頸部の診察(眼瞼・結膜,眼底,外耳道,鼻腔口腔,咽頭の観察,甲状腺の触診を含む)ができ,記載できる。

③ 胸部の診察ができ,記載できる。

④ 腹部の診察ができ,記載できる。

⑤ 神経学的診察ができ,記載できる。

 

(2)基本的な臨床検査

病態と臨床経過を把握し,医療面接と身体診察から得られた情報をもとに必要な検査の適応が判断でき,結果の解釈ができる。

① 一般尿検査(尿沈渣顕微鏡検査を含む)

② 便検査(鮮血,虫卵)

③ 血算・白血球分画

④ 血液型判定・交差適合試験

⑤ 心電図(12誘導),負荷心電図

⑥ 動脈血ガス分析

⑦ 血液生化学的検査

⑧ 血液免疫血清学的検査(免疫細胞検査,アレルギー検査を含む)

⑨ 細菌学的検査・薬剤感受性検査

・ 検体の採取(痰,尿,血液など)

⑩ 単純X線検査

⑪ X線CT検査

⑫ MRI検査

⑬ 神経生理学的検査(筋電図など)

 

(3)基本的手技

基本的手技の適応を決定し,実施するために,

① 道確保を実施できる。

② 工呼吸を実施できる(バッグマスクによる徒手換気を含む)

③ 心マッサージを実施できる。

④ 圧迫止血法を実施できる。

⑤ 注射法(皮内,皮下,筋肉,点滴,静脈確保)を実施できる。

⑥ 採血法(静脈血,動脈血)を実施できる。

⑦ 穿刺法(腰椎)を実施できる。

⑧ 導尿法を実施できる。

⑨ ドレーン・チューブ類の管理ができる。

⑩ 胃管の挿入と管理ができる。

⑪ 局所麻酔法を実施できる。

⑫ 気管挿管を実施できる。

⑬ 除細動を実施できる。

 

(4)基本的治療法

基本的治療法の適応を決定し,適切に実施するために,

① 療養指導(安静度,体位,食事,入浴,排泄,環境整備を含む)ができる。

② 薬物の作用,副作用,相互作用について理解し,薬物治療ができる。

③ 輸液ができる。

④ 輸血(成分輸血を含む)による効果と副作用について理解し,輸血が実施できる。

 

(5)医療記録

チーム医療や法規との関連で重要な医療記録を適切に作成し,管理するために,

② 診療録(退院時サマリーを含む)を記載し管理できる。

③ 処方箋,指示箋を作成し,管理できる。

④ 診断書,死亡診断書(死体検案書を含む),その他の証明書を作成し,管理できる。

⑤ CPCレポートを作成し,症例呈示できる。

⑥ 紹介状と,紹介状への返信を作成でき,それを管理できる。

 

B 経験すべき症状・病態・疾患

研修の最大の目的は,患者の呈する症状と身体所見,簡単な検査所見に基づいた鑑別診断,初期治療を的確に行う能力を獲得することにある。以下の(1)及び(2)については精神科研修以前に修得していることを前提としている。精神科において患者を受け持つ場合でも必要な項目であり,改めて記載する。

 

(1)頻度の高い症状

1)全身倦怠感

2)不眠

3)食欲不振

4)体重減少,体重増加

5)浮腫

6)発熱

7)頭痛

8)めまい

9)失神

10)けいれん発作

11)視力障害,視野狭窄

12)胸痛

13)動悸

14)呼吸困難

15)嘔気・嘔吐

16)嚥下困難

17)腹痛

18)便通異常(下痢,便秘)

19)腰痛

20)歩行障害

21)四肢のしびれ

22)排尿障害(尿失禁・排尿困難)

23)尿量異常

 

(2) 緊急を要する症状・病態

1)意識障害

2)急性中毒

 

C 特定の医療現場の経験

(1)精神保健・医療

精神保健・医療を必要とする患者とその家族に対して,心身両面及び社会的視点に立って対応するために,

1)精神症状の捉え方の基本を身につける。

2)精神疾患に対する初期的対応と治療の実際を学ぶ。

3)デイケアなどの社会復帰施設や地域支援体制を理解する。

必修項目 精神保健センター,精神病院等の精神保健・医療の現場を経験すること

 

(2)緩和・終末期医療

緩和・終末期医療を必要とする患者とその家族に対して,心身両面及び社会的視点に立って対応するために,

1)心理社会的側面への配慮ができる。

2)緩和ケア(WHO方式がん疼痛治療法を含む)に参加できる。

3)告知を巡る諸問題への配慮ができる。

4)死生観・宗教観への配慮ができる。

必修項目 臨終の立ち会いを経験すること

 

(3)地域医療

地域保健医療を必要とする患者とその家族に対して,心身両面及び社会的視点に立って対応するために,

1)診療所の役割(病診連携への理解を含む)について理解し,実践する。

2)へき地・離島医療について理解し,実践する。

3)社会福祉施設等の役割について理解し,実践する。

必修項目 診療所,へき地・離島診療所等の地域医療の現場を経験すること。