医局だより 【最新医学】病気について

アレルギー性鼻炎について   耳鼻咽喉科 副部長 最上 由美

今年も春の花粉症シーズンがやってまいりました。今年の松本市におけるスギ花粉の飛散開始日は二月十九日とうかがっております。例年どおり三月中旬頃より、突然にくしゃみ・鼻水が止まらなくなったといって当科に駆け込まれる患者さんが増えてきました。アレルギー性鼻炎の所見だとお話しすると昨年までは何ともなかっだのに…と驚かれる方も少なくありません。

 近年多くの国でアレルギー性鼻炎の患者数は急増しています。アレルギー性鼻炎は、くしゃみ(鼻のかゆみ)・水様性鼻汁・鼻閉を三主徴とし、その発症において鼻粘膜におけるI型アレルギー反応が病因であることが明らかとなっています。他のI型アレルギー疾患の代表的なものにアトピー性皮膚炎や気管支喘息がありますが、これらに併発して発症することも珍しくありません。症状発現のメカニズムについてはここでは省略させていただきますが、アレルギー関連の冊子にはたいがい載っていると思いますので興味のある方はご覧になってみて下さい。アレルギー性鼻炎は好発時期により通年性と季節性(いわゆる花粉症)に分けられます。原因抗原として主なものは、通年性においてはハウスダストやダニが、季節性ではスギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサ・ヨモギなどの花粉があげられます。日本においては通年性アレルギー性鼻炎が十歳代をピークに多いのに対し、花紛症は三十~五十歳代にピークがみられています。原因抗原の検査には皮膚テストや血液検査(特異的 IgE抗体定量)等があります。前記二つの検査は抗体を証明するものであって必ずしも発症につながりませんが治療の参考になると思いますので検査の御希望がありましたら相談にいらしてください。

 花粉症については最近あちこちで話題にとりあげられているので関心をもっている方も多いことと思います。今回は最近話題になっているスギ花粉症を例にしてお話ししたいと思います。スギ花粉の飛散開始日(1個/㎝2以上の花粉が二日以上続けて飛散した初日)から終了日までの間、天候に左右されながら花粉の飛散が続きます。その年の花粉飛散量は前年の夏の日照時間と雨量に大きく左右されるといわれており、おそらく今年は多いのではないかと予測されています。一方で、患者さんの症状発現の早さ(感受性)と反応の程度にはいずれも非常に個人差があるので同じ飛散状況下の環境にありながら症状が異なり治療は複難になります。花粉が連続して飛散すると鼻粘膜の過敏性が次第に亢進してきて同量の抗原であってもより強い症状がでるようになってしまいます。臨床的な調査から、一週間以内に一日あたり30個/㎝2以上の大量飛散があれば、抗原の量と症状の間にはもはや相関がなくなり、いったん悪化した症状は治療によっても容易に軽症化しない傾向があると報告されています。

 皆さんは花粉症における初期療法という言葉を聞いたことはありますでしょうか。これは先に述べたような状態をなるべく軽減するための予防的治療法として数年前より注目されているものです。初期療法には感受性を低下させ、反応性の亢進を抑制するという利点があり、従来より飛散開始日の2週間前から治療を開始すというのがガイドラインの提案にありました。しかし、実際のところ症状発現日は人によりまちまちなので感受性の違いにより投与する薬の内容を段階的に選択することになります。最初の弱い症状ほ抗ヒスタミン作用によって抑え、花粉量が増えて症状が強くなる時期には抗アレルギー作用により過敏性の亢進が抑えられるというしくみです。ここ数年当科にも初期療法を希望されていらっしやる方が増えてきました。

 当科ではアレルギー性鼻炎に用いる治療薬剤は鼻アレルギーの診療ガイドラインに沿って使用しています。具体的には専門的になりますがケミカルメディエーター遊離抑制薬、ケミカルメディエーター受容体拮抗薬(抗ヒスタミン剤…第一世代・第二世代、抗トロンボキサンA2薬・抗ロイコトリエン薬)、TH2サイトカイソ阻害薬、ステロイド薬、自律神経作用薬…α交感神経刺激薬・抗コリン薬、その他漢方薬、生物製剤、非特異的変調療法薬など多くの薬剤があります。これらを症状の程度に応じ段階的に処方していくわけです。

 症状がいったん強くでてしまうと局所ステロイド薬(点鼻薬や点眼薬など)ないし、さらにひどくなれば全身用ステロイド薬を使用しないと早急には制御困難となりえますので、毎年強い症状が出ている方はなるべく初期療法をお勧めします。ところで全身用ステロイド薬についてですが、他の薬剤に比較して効果発現が早いのでこれを最初から希望されていらっしゃる患者さんもいますが、副腎皮質抑制などの副作用を考慮しなるべく重症・難治例において使用するようにしています。ステロイド製剤は種類により強さが様々なので担当の医師によく説明をきいて治療を受けてください。ただし、安全性や副作用の観点から小児や妊婦さんに対する薬剤治療は慎重でなければならないということを追加させていただきます。また、もう御存知のこととは思いますが患者さん御自身にできる予防対策として抗原の除去と回避に努めていただきたいと思います。

 花粉症はこれからが大変な時期になります。少しでも満足していただけたらと思いながら、治療させていただいておりますが、是非症状の軽いうちに来ていただけたらと思います。