腰痛と予防

 副院長 整形外科医師 澤海 明人


 常に九~十%の人が腰痛を抱えており、一生の間に腰痛を経験する人は六〇~八〇%に上ります。特に最近は車やテレビが悪者にされ、歩くことが減り座る時間が長くなることで腰痛持ちが増えていると言われています。馬の椎間板ヘルニアや犬の腰部脊柱管狭窄症もあるそうですが、背骨が直立している人間に腰痛が発生しやすいことは明らだです。そんなどこにでもある腰痛とその予防について述べさせていただきます。

 背骨は直立していることによって重力がかかりますが、この時重心線は背骨の少し前方にあります。そのためテコの仕組みでバランスが取られており、背骨にはかけた重さ以上の負担がかかります。座位になると重心線は立位より前に移動するので更に負担が大きくなります。腰には立位で体重の約一・五倍、座位で約二倍の重さが負荷さ打ると言われています。重量物を持ち上げるような場合は極めて大きな負担がかかります。

 これらを背骨が支えているのですがこの時重要なものは椎間板です。背骨はいくつもの骨が積み木を積み上げたように重なって一本になっています。腰椎は五個の骨によって構成されますが、椎間板は骨と骨の間に存在する軟骨製のクッションの役割を果たすものです。非常にしっかりした構造で、正常な腰の椎間板は八〇〇㎏の重量を支えることが出来ます。しかしこの椎間板の寿命は非常に短く十歳台で老化現象く〈変性〉が始まります。老化の進んだ椎間板は四〇〇㎏程度のカでも壊れてしまい、壊れた椎間板が背骨の中の神経に影響する椎間板ヘルニアなどの病気も発生します。また椎間板のクッション機能が低下すると骨に負担がかかり骨の変形が生じます。主にこの変形した骨が神経に影響した病気が脊柱管狭窄症です。椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症は神経を障害するので脚の痛み〈坐骨神経痛〉や脚のしびれを伴うのが普通です。腰が痛いだけの椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は特殊なものを除いてありません。また、負担を支えるのに骨の強さも問題になります。重要な部分は椎体といいますがこれも丈夫な構造をもっていて、腰の椎体は正常で約六〇〇㎏の負担を支えることが出来ます。骨の密度が減って弱くなる病気が骨粗鬆症ですが、密度が三〇%減ると骨の強度は五〇%まで低下します。また椎間板や骨や神経は血管が豊富ではなく、栄養の供給は運動によって行われます。

 腰を保護するものとして筋肉が重要です。特に腹筋や背筋が強いと腰にかかる負担が何割も減ります。また腰の骨は真っ直ぐではなく前攣と呼ぶ前反り姿勢をとっています。この前攣を適度に保つことも良い腰のために重要です。そのためには腰、腎部、大腿の後面、股関節の前方、ふくらはぎなどの筋肉の柔軟性が必要です。

 以上より、腰痛の予防には ①出来るだけ良い姿勢を保つための腰、背部、大腿後面、股関節前方、ふくらはぎの筋肉のストレッチ ②腰の負担を減らすための腹筋と背筋の強化 ③椎間板や骨の健康を保つための適度な運動 ④腰に過剰な負担をかけない(生活様式、肥満の予防)などが重要です。また煙草や振動が椎間板の老化を早めると言われているので禁煙、車より歩くことも大事です。ただし腰の病気を持っている人の場合には腰痛体操の種類を選択するべきなので医師に相談してください。
医者任せではなく、自分で積極的に腰痛の管理、予防をすることが重要だと思われます。