◎特集 成人鼠径ヘルニアについて 第二外科部長 島田 良

[ヘルニアとは]

ある臓器が体の弱い部分やすき間から他の部位へ出てくる状態をヘルニアといいます。これは体のいろいろな場所で起こりますが、足の付け根付近(鼠径といいます)で起きるものに鼠径ヘルニアがあります。鼠径ヘルニアは腸が出てくることが多いため、俗に「脱腸」とよばれています。子供と大人では原因が違います。大人の場合、歳をとって身体の組織が弱くなるために起こることが多く、中年以降の男性に多く見られますが、女性にも起きる病気です。


[症状は]

立った時やおなかに力を入れた時、太ももの付け根付近(鼠径部)が“ぷっくり”と膨らんできませんか?そんな症状が見られたら、鼠径ヘルニア(脱腸)の可能性があります。左右どちらにも(両側同時も)起こります。
最初はピンポン玉くらいだったものが、時間とともに大きくなり、コブシ大になることもあります。そしてこの膨らみは体を横にしたり、手で押さえたりすると引っ込みます。飛び出しているときに“違和感”や“軽い痛み・重い痛み”を感じる方もいますが、通常は飛び出すこと以外の症状はないことが普通です。ただし、嵌頓(カントン)といって、今まで押せば引っ込んでいたものが、引っ込まなくなり痛みを伴うようになる場合もあります。この場合緊急手術が必要となります。


[ヘルニアの原因は]

おなかの臓器は腹膜という膜で覆われています。さらにその外側を筋肉が覆っています。
足の付け根には、この筋肉が弱くなっていたり、隙間が出来ている場所があり、ここから腹膜と一緒におなかの内容(脂肪や腸など)が飛び出すと、“ヘルニア”という病気になります。


[治療は]

残念ながら鼠径ヘルニアは薬や装具では治りません。手術が必要です。
足の付け根の筋肉が弱くなっている場所や隙間が出来ている場所を人工補強シートでふさぐ手術をします。3~4㎝の傷があれば、この補強シートを入れることが可能です。手術は通常半身麻酔で行っています。また最近ではおなかに5~10㎜程度の穴を3ヶ所開け、腹腔鏡という内視鏡を使って手術をすることもあります。両側にできた鼠径ヘルニアも同時に手術可能ですが全身麻酔が必要です。
「カントン」になると脱出した腸が腐ることがあり、手術が遅れるとヘルニアの手術に加えて腸切除も必要になってしまうばかりでなく命に関わる場合もあります。鼠径ヘルニアでは「カントン」を起こす前に手術を受けることが重要です。
できる場所が恥ずかしい場所なので病気を隠されている方が多いと思われます(特にご老人)。症状のある方は是非恥ずかしがらずに受診してください。