診察室の窓から1

安曇野の初夏の色  副院長 神経内科  中野 武

 通勤途中奇妙な錯覚にとらわれました。季節が判らなくなって秋かと思ったのです。道路の周り一面が黄金色で、秋の風情です。しかし実っているのは稲ではなく麦です。よく見れば黄金色の畑を縁取る畔道は、盛りにはまだ少し早い緑の夏草です。最近このような光景が増えてきました。前は気が付かなかっただけでしょうか。

 麦が熟れる頃。この季節は麦秋とも呼ばれます。麦秋は初夏の季語です。「麦秋」という名の日本映画もありました。小津安二郎の作品です。晩秋に蒔きつけた麦を、この時期に刈り取ります。そのあと田起しをして稲を植えます。後田と言うそうです。この安曇野では古くから稲や麦が作られてきました。限られた土地を有効に活用した先人の知恵です。減反の影響で後田では豆なども作られるそうです。

 色合いが変わってゆくのは空ばかりではありません。安曇野を俯瞰する位置から見ると地面の彩りも日々微妙に移ろって行きます。しばらく前までは水の張られた水田に、稲が植えられ少しずつ緑になりました。そして麦畑の黄金色とのコントラスが映えるようになり、やがて成長した稲で緑一色に変わります。少しずつ確実にその姿を変えてゆきます。夏へ移ろう季節の風景を楽しんでいます。