脳神経外科だより  慢性硬膜下血腫について

  脳神経外科副部長 宮武 正樹

1 慢性硬膜下血腫とは

 比較的軽い頭部打撲の後、2週間から2~3ヶ目過ぎた「慢性」の時期に、頭蓋骨の内側に張付いている硬膜と言う厚い膜と脳を包むクモ膜と言う膜との間の「硬膜下」という隙間に、ゆっ<リと血液が溜まって脳を圧迫する病気です。(図1)

 一般的には軽微な頭部打撲によって脳と硬膜をつなぐ静脈が破綻して脳の表面に少量の出血が起こります。その出血と脳表の髄液が混ざった血性貯留液が、被膜を形成しつつ血腫(血の溜まり)として成長するとされています。浸透圧が高いため周囲の組織から水分をうばい体債を増します。このため被膜に亀裂が生じて再び少量の出血が起こります。これを繰リ返して血腫が増大すると考えられています。最近は脳梗塞や心臓病の予防のために抗凝固療法や抗血小板療法が行なわれていますが、このような場合は特に起こりやすいとされています。

 当院では年間20~30件の手術を行っています。
 好発部位は前頭、側頭、頭頂部で、右か左かの一側性のことが多いのですが、時には両側性(約10%)に見られます。

 60歳以上の高齢の男性やアルコール多飲者により多くみられます。高齢者はたとえ軽い打撲でも、脳の萎縮によって脳表と硬膜の間にある静脈が伸びているため断裂されやすく、出血しやすい傾向があります。アルコール多飲者は一般的に転倒しやすく、頭部打撲に対して無頓着になりがちで、酒酔や外傷後の健忘のため打撲したことを覚えていないため頭部打撲の事実がはっきりしない場合も少な<ありません。その他に影響する因子として肝臓の病気などで出血傾向がある場合や脳梗塞の予防の薬(抗凝固剤>を飲んでいる場合、水頭症に対する短絡術術後、人工透析治療中などがあげられ、慢性硬膜下血腫を生じやすい条件として注意を要します。

2 症状

 一般に頭部打撲後数週間の無症状の時期を経て発症します。症状は年代によって異なリ、比較的若い人では徐々に悪化する頭痛や嘔吐、片麻痺、感覚障害などをきたします。
一方、高齢者では物忘れ、言動がおかしい、性格変化などの精神症状が目立ち、失禁、歩行障害などがみられます。