脳神経外科だより 脳梗塞について

脳神経外科医師 堀内 哲吉

昔は、脳の血管に何らかのトラブルが起こった病気はすべて脳卒中と呼ばれていました。
その理由は、脳の中がわかる検査方法がなく、診断ができなかったからです。
現在ではCTやMRIなどの検査により血管がつまった状態(脳梗塞)なのか、血管が切れて出血してしまった状態(脳内出血、くも膜下出血)なのかを診断し治療を行うことができます。
今回は脳梗塞についてご説明します。



①症状

脳の部位にはそれぞれの役割分担がありますので、つまった血管の場所によって様々な症状が出現します。
代表的な症状としては、言語障害(ろれつがまわらないなど)・手足の麻痺・感覚障害(しびれなど)などがあげられます。
一方、無症候性脳梗塞(図1 MRI像…矢印がさしている計3ヶ所の白い斑点の所が脳梗塞)といって、なにも症状のない脳梗塞もあります。
これは、脳ドックなどでMRIの検査を行ったとき偶然みつかるものです。
これは一種の脳の老化でありますが、脳の血管の動脈硬化によっておこります。
無症候性脳梗塞の患者様が将来的に症候性脳梗塞(麻痺や言語障害などの症状のある脳梗塞)に必ずなるわけではありませが、定期的な経過観察は必要です。


②原因

つまる原因は以下のように大きく2つに分けることができます。

脳血栓症・・・ 
脳の血管自体が動脈硬化で細くなりつまることです。比較的細い血管がつまります。
(図2 CT像…矢印の黒い部分が梗塞)

脳塞栓症・・・ 
心臓の中や首の血管に血の塊があり、これが脳の血管に飛んできて血管がつまることです。不整脈を持つ患者様に多く、太い血管がつまります。
(図3 CT像…向かって右半分の黒い部分が梗塞。図2と比べて範囲が大きい)



③診断

神経症状(言語障害や麻痺など)と画像検査(CTやMRI)にて診断します。脳梗塞は病気になった直後は、すぐにCTやMRIで影が出るわけではありません。最新の検査法を使っても、つまってから1~2時間ほど経たないとわかりません。
重症の場合は緊急で脳血管撮影(カテーテル検査)なども必要です。


④治療

脳は非常に血液不足、酸素不足に弱い臓器です。約5分間、血液の流れがとまると脳細胞は死んでしまいます。脳の部位差もありますが、脳の血流が途絶えると、その血管が栄養していた脳は早く死んでしまいます。よってすべての脳を救ってあげることは困雛です(つまり、病院についた時には脳の一部分は死んでしまっていることが多いのです)。しかし、死んでしまった部分の周りには血液が足らなくて危篤状態となっている脳細胞が数多くあります。この危篤状態の脳細胞を助けてあげようとするのが脳梗塞の治療です。これらの脳細胞を救ってあげることによって少しでも後遺症を軽くすることが治療の目標になります。よって、少しでも早く治療を開始すれば、よくなる可能性も高くなります。言語障害や麻痺などの脳梗塞症状が出現したら、すぐ受診して下さい。
実際の治療では、細い血管の脳梗塞では酸素投与や血流改善薬を使用します。(つまった血管が細いため手術治療は一般的にはできないことが多いです)。一方、太い血管の閉塞による脳梗塞では血管内手術(血の塊を溶かす)や開頭術(バイパス術、塞栓除去術)などの手術治療も行われます。しかし、一度脳梗塞を起こしてしまうと後遺症を残すことも多く、再発作も少なくないので、ならないように予防することが大事です。


⑤予防

残念ながら現代の医学では確実に脳梗塞を予防する方法はありません。
しかし、脳梗塞になる危険因子(高血圧、糖尿病、不整脈、高脂血症など)の治療をしっかり受けることによってある程度の予防効果が期待できます。
また、定期的な脳の健康診断(脳ドックなど)を受けることも有用と思われます。