小児科だより 背がひくい・背の伸びがわるい ~成長曲線をつけてみましょう~

 小児科医師  竹内 浩一


医学的に背が低いというのは

背が低いというときの身長はどのくらいのことをいうのでしょうか。もちろん年齢によって違いますが、普通は同年齢(同学年)の他のこどもと比べて見た目の印象で背が低いときに使われます。しかしこの評価は普段話をするには構いませんが、病的な低身長、つまり治療可能かもしれない低身長を見つけ出すためには不十分です。そこで病的かどうかをみるための道具があります。
これが成長曲線と呼ばれるものです(図)。上が身長の曲線、下が体重の曲線です。身長の曲線をみてみると全部で7本の線があります。上から+2SD、+1SD、平均、-1SD、-2SD(少し前に使われていた成長曲線はここまでの5本しか描かれていませんでした)-2・5SD、-3SDとなっています。ここで登場するSD、エスディーとは標準偏差の略で平均からの隔たりを表しています。医学的な低身長というのは-2SD未満のことをいいます。この-2SD未満の身長の人は百人中2、3人しかおらず病的な低身長の可能性があるため検査を受けたほうがいいといわれています。ことに-3SD以下の人は千人に1人という極端な低身長であるため早めに検査を受けることが必要です。また現在の身長もさることながら、あるいはそれ以上に、その伸び率が低下している場合にも注意が必要です。お子さんの成長曲線が標準の曲線から離れていく場合、伸び率が低下していると考えられます。たとえ現在の身長が低くなくても伸び率が低下している、つまりだんだんと標準の曲線から離れていく場合には受診が必要です。


治療できる低身長の人は

 さて医学的な低身長のお子さんのうちどれくらいの人が病的な低身長なのでしょうか。低身長のお子さんをその原因別にみてみると、大半の方は病的でない低身長、すなわちご両親の身長が低いことによる家族性低身長や小さく生まれたことによる低身長、思春期が他の人よりも遅いことによる低身長などであると考えられます。この病的でない方の割合は8~9割といわれています。残りの1~2割の方が病的な低身長で、成長ホルモンなどのホルモンの異常・骨や軟骨の異常・染色体の異常・全身の病気による人などがいます。多少の例外はありますが、この病的な低身長の方の多くは広い意味で何らかの治療が可能であるといえます。ただしここでいう治療には低身長の直接の治療でないものも含まれますし、必ずしも低身長の改善につながらないこともあります。また有名な成長ホルモン療法はこのうちの一部の方にしか適応がありません。いずれにしても、医学的な低身長のお子さんのうち何らかの治療が可能な方は1~2割ということになります。というと、それではわざわざ検査などする必要などないのではないかと思われるかもしれません。しかし割合が低いとはいえ成長ホルモン投与により明らかに身長の伸びがよくなるお子さんがいます。また背の低い女の子の中にはターナー症候群という病気の方が少なからず含まれていて、身長ばかりでなく体の他の部分にも異常が見つかることがあります。さらに、背の伸びがわるいお子さんを調べてみると、脳腫瘍(頭の中のできもの)が見つかることがあります。このように病的な低身長かどうか調べることは低身長の診断・治療のみならず、他の病気の発見などにもつながるため、お子さんやご家族にとって十分利益のあることと思われます。


背が低かなと思ったら

 では実際にはまずどうしたらいいのでしょうか。最初にも書きましたようにもしお子さんの身長が気になったらまずきちんと成長曲線をつけてみてください。周りからみて背が低いと思われても医学的な低身長ではないかもしれません。逆にそれほど気にならないと思われる身長でも意外にも低めで検査をしたほうがいいこともあります。お子さんの身長が-2SD未満の医学的な低身長ならば一度小児科の外来に相談してください。また先にも書きましたように、身長の伸び率が極端に低下している場合には何らかの病的な状態である可能性が高くなります。早めに受診してください。
成長曲線はグラフのつけ方を添えたものを小児科の外来に置いてあります。ご自由にお持ちください。何かわからないことがあれぱ小児科外来スタッフまでお気軽にお声をおかけください。