外科だより  「もうちょう」について

  第一外科医師 野竹 剛

「もうちょう」といえば皆さんよくご存知の病気だと思います。「もうちょう」で手術をうけた方も多いのではないでしょうか。
それでは「もうちょう」という病気はどんな病気でしょうか…?

 皆さんが「もうちょう」と呼んでいる病気は、医学的には「急性虫垂炎」という名前です。これは虫垂という腸に感染が起きてしまった状態です。お腹の右下の辺りに大腸の入り口である盲腸があり、この下に尻尾のように飛び出した5~10㎝の腸を虫垂といいます。「もうちょう」と呼ばれていますが、実はこの病気は”盲腸”ではなく”虫垂”の病気なのです。

 急性虫垂炎の症状としては右下腹部の痛み、発熱、吐き気、嘔吐、食欲低下などが挙げられます。典型的には、まず「みずおち」からお臍の辺りの痛みで始まり、数時間から1日ほどすると痛みの部位が右下腹部に移動してきて、右下腹部を押すと強く痛むようになり、歩いても右下腹部に痛みがひびきます。

 ここで注意しなければならないのは、右下腹部が痛くなる病気は虫垂炎だけではないということです。虫垂炎と同様の症状・所見を呈するものとしては大腸憩室炎・急性腸炎・腸間膜リンパ節炎といった病気や、女性の方では子宮内膜症などの婦人科疾患、高齢の方では大腸癌などの悪性腫瘍といった病気が挙げられます。実際、虫垂炎の診断で手術を行なった際、本当に虫垂炎であるのは80~90%だといわれています。超音波検査や腹部CTによってかなり正確な診断が可能になってきてはいますが、診断が難しい場合もあります。

 治療法は手術と保存的療法の2通りがあります。
手術を行なう場合には右下腹部に3~5㎝程度の傷を開けて虫垂を根元から切り取ってきます。入院期間は一般的には5日~7日程度です。
保存的療法とは抗生物質の投与により炎症を押さえ込む方法です。いわゆる「ちらす」治療法です。最近は抗生物質の進歩により、多くの場合で「ちらす」ことも可能となってきました。しかし「ちらす」治療を受けた患者さんは、虫垂が残っているので再発する可能性があります。また再発した場合に典型的な症状が出にくくなって診断が遅れたり、癒着(お腹のなかで腸がくっついてしまうこと)がおこっていざ手術をする際に手術操作が困難なため傷が大きくなってしまうケースもあります。

 どちらの冶療法を選ぶかは炎症の程度で判断します。軽症と考えられる場合には保存的療法が良いと思われますが、超音波検査などではっきりした所見がある場合には手術をお勧めしています。
特に小さなお子さんや高齢者の方は破裂し、重症化してしまう危険性が高いため手術による治療が優先されます。

  「もうちょう」といえば身近な病気の一つです。しかし場合によっては重症化することもあります。右下腹部が痛い、歩くと右下腹部にひびくような痛みがあるといった症状の方や、お子さんが右下腹部を触ると嫌がるようなことがあった場合には、我慢せずに早めに診察を受けに来るようにしてください。