◎特集2 耳性めまい    耳鼻咽喉科部長 佐々木 由美

 めまいをおこす疾患には脳卒中にみられる中枢性めまいをはじめいろいろなものがありますが、耳鼻咽喉科領域のめまい疾患は主に耳性めまいとよばれる疾患群です。代表的なものとしてメニエール病・前庭神経炎・突発性難聴・良性発作性頭位めまい症などがあります。特徴はめまい・平衡障害といった前庭症状の他に、難聴や耳鳴り・耳閉感などの蝸牛症状(聴覚の異常)を伴うことです。


 耳性めまいの中でも良性発作性頭位めまい症と前庭神経炎は聴覚症状を伴いません。そのうち前者はめまい症の約30~40%を占めると言われています。最近は新聞やニュースでも時々取り上げられているので聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。良性発作性頭位めまい症は日常、耳鼻咽喉科外来のみならず救急外来でもよくみかけられる急性めまい症の1つであり、とても特徴のあるめまい症なので典型例では問診のみでもおおよその診断が可能です。診断が確定すれば適切なリハビリ治療を早期に開始することで早い時期に軽快が期待でき、また原因がわかることで不安からも解放されます。日常比較的おこりやすい経過良好なめまい症なので多くの皆さんに知っておいていただきたいと思います。

良性発作性頭位めまい症とは

・特徴は

ある特定の方向に頭の位置を動かしたときに数秒から数十秒のグルグル景色が回るようなめまいが始まります。めまいを起こす頭の位置(めまい頭位)が決まっているのが特徴です。その頭位のままこらえて待っているとめまいは通常数分以内(多くは1分以内)におさまりますが逆に元の向きに頭位を戻してみると再びめまいの増強があり、じきに減弱ないし消失します。吐き気や嘔吐を伴うことがありますが聴こえの症状や中枢神経症状は伴いません。

・具体例

寝返りを打った時、靴紐を結ぼうとした時、高い棚の上のものを取ろうとした時、洗濯ものを干そうとした時など特定の決まった向きに頭を傾けたとたんにぐるぐる回るようなめまいが始まります。(この時、通常苦しいので目をつぶってしまいますが眼球の動きを観察してみるとくりくりと強く揺れています。)いったん起き上がってしばらくしているとめまいがおさまる、あるいはめまいのしない頭位でじっと寝ていれば大丈夫だけど先ほどの頭位に戻してみたらまためまいが始まってしまった。動くとめまいが再発するので怖いから数日同じ向きで寝ていたけどやっぱり起き上がるとダメ。といったようなエピソードをよく伺います。

・どうして起こるの?

実際には半規管結石症とクプラ結石症というタイプがあるといわれています。詳しくは物理学的な難しい説明が必要になるのでわかりやすく言うと前庭という平衡感覚器内にある耳石が剥離して半規管内を浮遊・移動することが誘因となって生じるといわれています。頭の向きが変わることで迷入した耳石の位置がずれることでめまいが起きます。

・どんな治療をするの?

めまいを生じない位置へうまく耳石を追い出せれば症状は改善しますので半規管の向きに沿って適切な方向に頭や体の位置を動かす理学療法(リハビリ)を行います。むやみやたらに動いても効率良くないので最初は専門医を受診して
指導してもらいましょう。安静にして1日中寝ていても良くなりません。他に特別な病気がなければある程度吐き気がおちついてきたら積極的に起きて無理のない程度に動いていた方がめまいは早く治ります。症状によって抗めまい薬や吐き
気止め・抗不安薬などを併用します。

・完全に治るの?

先ほど述べたように理学療法で原因となっている耳石小片を本来の位置に戻してあげることができればその場でピタッと治ると言われています。実際のところはピタッとまではいかないまでもリハビリを開始することで劇的によくな
るのは確かです。一方で難治症例や再発を繰り返す例もあり入院が必要になる場合があります。原因が生活習慣にある例もあります。また、急性発症時には脳卒中と鑑別しなければいけないような重症例もありますので、とくに症状が強いときは自己判断は禁物ですので最寄りの病院を受診してください。