診察室の窓から11

秋風が吹く頃に    副院長 神経内科  中野 武

秋に吹く風は西風を意味するようです。「こち」と呼ばれる春の東風と対比されます。しかし安曇野の風は季節を通じて南からの風が多いようです。南北に細長い盆地と西側の高い山。南から北に向かう空気の流れが発生します。雲の流れも同じです。

古今和歌集に「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」。風の姿や色は判りません。視覚ではなく音や気配から感じるのは今も同じです。秋の風には詩情をかき立てる何かがあります。春の風とも違います。去って行った夏、そしてやがて迎える冬。秋の風に季節の流れを感じます。

そして稲穂が実るこの季節に風祭りがあります。風を鎮め災いの無いことを祈る祭りです。富山のおわら風の盆が有名ですが、安曇野にもこの風習があるそうです。

安曇野の屋敷林の報告書「安曇野の屋敷林―その歴史的まちなみを訪ねて」(屋敷林と歴史的まちなみプロジェクト)を先日拝見しました。防風のため安曇野の屋敷林は南側に作られます。南からの風が多いからでしょう。鬱蒼として小さな森のように家を包む屋敷林が点在する風景。この安曇野の風景の中を秋風が吹き渡ります。