診察室の窓から10

春の記憶    副院長 神経内科  中野 武

待ち合いホールの方から「北国の春」が流れて来ます。北国の遅い春。待ち焦がれた春。別れと出会いの春。この歌謡曲には聴き飽きても何故か心に響くものがあります。この曲は望郷の思いを綴ったものでもあり、情景が目に浮かびます。「北国の春」が流行したのは昭和五十二年です。この頃に「やまびこ国体」が開催されました。国体に合わせて松本駅も改築されました。もちろん現在の駅舎はさらにその後に改築されたものだそうです。

さて「北国の春」の歌の舞台となる北国がどこなのか。作詞者(いではく氏)は、故郷である信州佐久地方の春の光景をイメージしたそうです。「北国の春」の歌詞の中には、こぶしの花が登場します。こぶしの花は、安曇野の花曇りの空の下で良く映えます。こぶしは、田打ち桜とも呼ばれます。遠くから見ると少し桜に似ています。しかし桜とは趣きの違った艶やかさがあります。咲く時期が田打ち、田起こしとも重なります。

春まだ浅い四月、冬の名残りの枯れ木の間で、白いこぶしの花が咲いています。大きな花弁の宿命でしょうか、春の嵐に打たれる運命です。花が散り、田に水がはられ、安曇野に田植えの季節が来ます。