診察室の窓から9

冬の朝に      副院長 神経内科 中野 武

登山が趣味の同僚とモルゲンロートの話をしました。聞きなれない言葉ですが、ドイツ語で朝焼けのことです。朝焼けで風景が赤く染まる状態を指します。浮世絵では葛飾北斎の赤富士が有名ですが、ここ安曇野でも朝焼けで常念岳が赤く染まります。天気図がどのようになると朝焼けが見えるのでしょうか。東の空が黄金色に染まり茜色の雲が流れる時が多いようです。

朝焼けで常念岳の峰が赤く染まる時刻には速いスピードで周囲が明るくなります。
瞬間とは言わないまでも短い時間、息を潜めて待つくらいの間だけ山の頂きが輝きます。毎日繰り返す夜と昼が混ざり合う時間。暗闇から目覚めて青みを帯びた木々や田畑の風景。無彩色の世界から家々の壁や屋根の色彩が蘇り、里では人びとの生活が始まります。そのような時間帯に赤常念に出会えます。朝焼けは夏の季語。でも赤常念を楽しむには冬が良いようです。冬は頂の雪の白さとの対比が映えますから。

高い山の頂には神々が住むと云われます。山の頂きが赤く染まることを古人は奇異に、そして神々しくも思ったことでしょう。
赤常念は春にむかう安曇野の景色の一つです。