診察室の窓から8

秋の気配      副院長 神経内科 中野 武

朝や夕はだいぶ涼しくなってきた。しばらく前のあの暑さも記憶の中に落ち着きつつある。安曇野の夏が年々暑くなってきたように思う。確かに昔も暑い日はあった。そして以前に比べて季節の流れが速くなった気がする。8月早々に秋の風情を感じる。日も少しだけ短くなってきて、診察が終わる頃になると辺りが夕暮れる。週ごとに日暮れが早くなっていくのが判る。

或る日の見慣れた風景の中に「小さい秋みつけた」。作者のサトウハチローはこの詩について、「原稿用紙を前に布団に腹這いになって外を見ていたら赤くなったハゼの葉を見て言い知れぬ秋を感じて、この歌を書き上げた」と書いているそうだ。この童謡は最早会うことが出来ない母の面影を歌ったものだ。

暑くなったり涼しくなったり、夏と秋がせめぎ合っている訳ではない。夏の気配のなかにも秋が静かに生まれている。診察室の窓から見える道路を行きかう人たちの服装や気配。夕焼け雲や射し込む光の様子から感じることができる。雨のあと通り過ぎる風にもふと秋を感じる時がある。

小さな秋が至る所で見られるようになると本当の秋がやって来る。ひと雨ごとにその秋も深まってゆく。そして安曇野の風景の中に「小さな冬」も何処かで生まれている。